一道下遺跡 北杜市須玉町大蔵地内

1.所在地:北杜市須玉町大蔵地内
2.調査期間:令和3年1月~令和4年3月
3.調査面積:12,400㎡
4.調査概要
 一道下遺跡(いちみちしたいせき)は、塩川と須玉川に挟まれた河岸段丘上の微高地、標高約500mに立地しています(図1)。令和元~2年度に県営圃場整備工事に先立ち、遺跡の有無を確認するための試掘調査を実施しました。その結果、工事範囲のうち約23,000㎡に奈良・平安時代(今から1,300~1,000年前)の集落跡が広がっていることがわかりました。その後の協議により、工事(掘削等)の影響がある12,400㎡を対象に発掘調査を行い、残りは埋土による現地保存としました。

図1 調査区遠景(南から) 黄色範囲:調査区

1)発見された遺構

 発掘調査の結果、奈良・平安時代の竪穴建物跡135軒、掘立柱建物跡22棟、溝状遺構18条、柵列(柱穴列)13列などが発見されました(図2・3)。

図2 調査区南側 空撮写真
図3 調査区北側 空撮写真

【竪穴建物跡】

 竪穴建物跡は8~11世紀のもので、一辺5~6mの方形、北壁または東壁にカマドが設けられています(図4・5)。一辺が7~8mに及ぶ大形の竪穴建物も見つかっています。
 建物内からは、当時の人々が使用した食器類(坏・皿・蓋)などが出土し、カマドの周囲には煮炊きに使用した甕などが残されていました。

図4 竪穴建物跡(東壁にカマド)
図5 竪穴建物に設けられたカマド

【掘立柱建物跡】

 掘立柱建物は、集落に暮らす人々の作業場や倉庫であったと考えられます。中には、一辺が約1mにおよぶ大型柱穴を持つ掘立柱建物も見つかっており、一般の集落では見られない特徴的な建物です(図6・7)

図6 大型柱穴を持つ掘立柱建物跡
図7 掘立柱建物群

【溝状遺構・柵列】

 土地を区画するために設けられたと考えられる、溝状遺構(図8)や柵列が発見されました。一道下遺跡では、溝や柵で区画された内部に竪穴建物や掘立柱建物が配置されていたと考えられます。

図8 溝状遺構
L字状の溝によって、土地が囲われているのが分かります。

 発掘調査で発見された遺構や遺物から、一道下遺跡はこの時期の峡北地域において拠点的な集落として機能していたと考えられます。次回は、出土遺物を紹介します。