一道下遺跡-出土遺物 第1弾-
北杜市須玉町大蔵地内に所在する一道下遺跡では、奈良・平安時代の竪穴建物跡135軒、掘立柱建物跡22棟、溝状遺構18条、柵列13列が発見されました(詳細は前投稿を参照)。
今回は、発掘調査で出土した主な遺物を紹介します。
円面硯
8世紀の竪穴建物跡から、北杜市内では初めて「円面硯(えんめんけん)」と呼ばれる硯が出土しました。奈良・平安時代に、硯を使用して文字を書くことができるのは僧侶や役人などの”字”を知っている、ごく限られた人だけでした。そのため、円面硯は寺院や役所に関連する遺跡から出土することが多いです。
一道下遺跡には、字を知っており、円面硯を使用できる役人や知識者が暮らしていたことがうかがえます。
巡方
「巡方(じゅんぽう)」は、奈良・平安時代の役人が正装する際に使用する帯の飾りです。役人の身分を示すものとして採用されており、官位によって着用できる巡方の材質が決められていました。
一道下遺跡には、役人とのかかわりが深い人物が暮らしていたことがわかる、重要な遺物です。
分銅
122号竪穴建物跡から、金属製の分銅が出土しました。分銅は、秤で重さを量るときの基準となる”おもり”です。高さ3㎝、幅1.8㎝、厚さ1.8㎝、重さ66.0gでした。8世紀頃(奈良時代)の単位重量は一斤=660~670gで、出土した分銅はちょうど一斤の1/10の重さになります。X線撮影をしたところ、上部にひもを通す穴がついており、竿秤の”おもり”として使用されたと考えられます。
調査区からは、「斤」「升」「斗」など、ものの単位を示す文字を書いた土器(墨書土器)が多く出土する傾向があります。一道下遺跡に暮らした人々が担った役割を考えるうえで重要な遺物です。